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大阪高等裁判所 昭和37年(ネ)7号 判決

控訴人(附帯被控訴人) 大和実業株式会社

被控訴人(附帯控訴人) 伊藤雅隆 外二名

主文

原判決を取消す。

控訴会社が昭和三五年一月二九日臨時株主総会の名においてなした、大阪市北区角田町九番地高原良蔵、同所桑原セツ子、兵庫県西宮市甲風園二丁目一四五番地沢田利秋が夫々同会社の取締役に再選せられて重任し、大阪市北区角田町九番地桑原サキが取締役に選任せられて就任し、同市西成区潮路通一丁目二七番地酒井稔が同会社の監査役に選任せられて就任した旨の決議、並びに同会社が解散し、高山勝光を清算人に選任する旨の決議の存在しないことを確認する。

訴訟費用は第一、二審(附帯控訴費用を含む)とも、控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下控訴人と称す)は控訴につき、「原判決を取消す。被控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする」との判決を求め、附帯控訴につき附帯控訴棄却の判決を求め、被控訴人(附帯控訴人、以下被控訴人と称す)代理人は控訴につき控訴棄却の判決を求め、附帯控訴につき、「控訴会社が昭和三五年一月二九日臨時株主総会の名においてなした大阪市北区角田町九番地高原良蔵、同所桑原セツ子、兵庫県西宮市甲風園二丁目一四五番地沢田利秋が夫々同会社の取締役に再選せられて重任し、大阪市北区角田町九番地桑原サキが取締役に選任せられて就任し、大阪市西成区潮路通一丁目二七番地酒井稔が同会社の監査役に選任せられて就任した旨の決議の存在しないことを確認する。附帯控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。

被控訴人の事実上の主張は

「原審において被控訴人は、控訴会社が昭和三五年一月二九日臨時株主総会の名においてなした会社解散決議と、これに伴う高山勝光を清算人に選任する旨の決議の不存在確認を求め認容せられたのであるが、右臨時株主総会の名を以て、高原良蔵、桑原セツ子、沢田利秋の取締役再選、桑原サキの取締役選任、酒井稔の監査役選任の決議がなされた如くなつているので、その不存在確認を求めるため附帯控訴する」と述べた

ほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴人は被控訴人主張事実はすべて認めると述べた。

理由

被控訴人主張事実はすべて控訴人の是認するところ、右事実によれば被控訴人の本訴請求(附帯控訴による請求を含む)はすべて正当として認容すべきであるが、職権を以て按ずるに、原審においては大原篤が被控訴会社の代表者たる清算人高山勝光の職務代行者として、控訴人の訴訟追行にあたつているところ、もとより、株主総合決議不存在若くは無効の訴を本案とする職務執行停止、代行者選任の仮処分がなされ、会社の取締役又は清算人がその職務の執行を停止せられたときは、爾後右取締役又は清算人はその職務の執行をすることができなくなり、代行者において従前の職務執行者に代り職務執行の権限を取得するものではあるが、右仮処分命令によりその職務の執行の停止せられるのは、その性質上、当該仮処分(これに対する異議の申立、特別事情による取消の申立、控訴の提起等)及びその本案訴訟以外のものに限られ、その執行停止の効果及びこれが補充として仮りに為された代行者選任の効果は右仮処分の当否を決する訴訟及びその本案訴訟(これに対しては、仮処分によつて惹起された法律状態は、あくまでも仮定的のものであるべきであつて、訴訟の前提たる既定事実たり得ない)の訴訟追行については、当然の事実として取扱い得ないものと解するのを相当とし、また本件の清算人高山勝光は、当事者の陳述によつても、控訴会社の真実の代表者でないことが明らかであるが、このことを裁判によつて確定する必要性が存する以上は、右の結果を真の権利関係として確定するためには、訴訟前の事実又は現在の外観的な状態、即ち登記簿上の記載に従つて訴訟追行者を定め、その者に裁判の既判力を及ぼすことによつてこれを決するのが相当であるというべきところ、右大原篤は本件を本案とする職務執行停止、代行者選任の仮処分により清算人高山勝光の職務代行者に選任せられたものにすぎないことは本件記録に徴し明らかであるから、右大原篤は本件につき訴訟の追行をなしえないものというべきである。そうすると、原判決はその当事者の一方の代表者を誤り、訴訟代理について正当性を欠き、その判決の手続において法律に違背しているものというべきであるから、民事訴訟法第三八七条によりこれを取消すべく、本件につきなお弁論をなす必要がないので、自ら裁判をすることとし、同法第九六条第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岡垣久晃 宮川種一郎 大野千里)

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